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  • ふく
  • 6月13日
  • 読了時間: 2分

 3年ほど前から始まった通院の待ち時間。血液検査の結果が出るまでに時間が要るのだそうで、けれど一度家に帰るのも面倒で、いつも診察まで数十分待機することを選んでいる。

 小説を書きまくっていた頃は、執筆や推敲をしていれば一瞬でこの時間が過ぎたなぁ、と懐かしみつつ、今は少し退屈気味にぼんやり待合室に座る。「リプレイ」のタイトル案を考えていたらあっという間に名前が呼ばれたこともあった。

 時間を潰すには最適だったけど、私にとって言葉や文章を吟味するのはそれだけ時間を食うことだったとも言える。三十分が瞬き一発の間に過ぎ、三十分くらい経ったかと時計を見ると三時間が過ぎていて、体感二時間で休日がまるまる一日消える。書けなくなってからはそれが特に顕著で、小説を書くことは私と世界に流れる時間の速さをおかしくしてしまう摩訶不思議な行為だった。何一ついいものが書けないまま日が沈み私の人生の一日が消える虚しさはなかなかのもので、だから今の私にとって文章は書けるときにしか書いてはいけないものになった。

 書けていた頃は時間を忘れてしまうほど楽しい行為で、小説を書いて土日が終わろうと虚しくなんかなかった気がする。病気になって、痛くて外へ冒険できなくなった代わりに、自分の内側へいくらでも冒険していけることを発見して楽しかった。あの無敵モードがまた戻ってきてほしいような、十分夢中になって書いたからもういいような。


 どこも痛くなくなって今はどこへでも行けるようになったから、今はそっちを味わっていたいときなのかもしれない。

 現に最近は無性に旅がしたい。去年会社から無茶苦茶な行程の出張を言い渡され、合間に仕返し混じりの壮大な寄り道を挟みつつ完遂してからというもの、学生時代ぶりに旅の楽しさを思い出した気がする。なぜかどうしても行ってみたい場所があって、知らない土地の電車やバスや所要時間を調べて、計画どおりに乗り物に乗ってそこまで行く、って楽しいよなぁ。

 今年もまだ大小旅行の計画が残ってる。この気分が続くうちはこっちの旅を楽しむことにしよう。

 
 

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