瞬き
- ふく
- 7月21日
- 読了時間: 2分
飲み屋街のエレベーターもない雑居ビルになぜか入っているすてきなカフェを訪れ、そこで読みさしの本を読了して図書館に向かおうと目論んでいたところ、居心地がよすぎて気付いたら閉館時間が過ぎていた。借りてたものだけ返却ポストに入れて帰るかと歩き出すと、これから目を覚まそうという夕暮れの歓楽街の店先でback numberの「瞬き」が流れていた。バンドのことは名前以外よく存じ上げないが、この曲を「THE NEXT DOOR」を書いている頃ふと耳にして、テーマにしたとかいうわけじゃないが強いシンパシーを感じながら執筆を勧めた曲であったので、懐かしさとともにやっぱりいい曲だなぁと感じつつ通り過ぎた。
最初に耳にしたのはご本人方の演奏ではなく、この曲を歌うストリートミュージシャンの少女の動画であったと思う。彼女の歌いぶりも合わさって印象に残った。TNDで描こうと試みたのは単色の幸せじゃなく、眩しい青春はもう二度と来ないという穏やかで寂しい直観と、それでも残り続いていく等身大の幸福の深度みたいなものだったので、この曲と共鳴する部分が大きかった。試みはあまりうまくいかなかったが。
星が降る夜と眩しい朝が繰り返すよう だったのだと思うのです、かつて二人は。仮にいつかそうでなくなり、あの頃はよかったと振り返る日があるとしても、若い頃には知り得なかった今の幸福をかけがえのないものとして生きていく二人が見たいというのが、本作を書こうとしたときの初期衝動の一つだったかもしれない。
青春時代って魔法のかかった時代だと、歳取ると心底思う。この世のことはもちろん、人のことも自分のことさえまだよく分かっていなくて、だから自分にも他人にも無限に夢を見られるし、何もかもが新しいんだからちょっとのことで常に激しくときめくことができる。
そこから生きれば生きるほど世間を知り、知っていることが増えるにつれ大抵のものがありふれて輝きを失い、自分の形もあらかた分かってしまって、見られる夢も限られていく。残った幸せも若い頃無邪気に思い描いていたのに比べて大幅に地味で取るに足らなくて、あーあこんなもんかよって苦笑いしちゃうんだけども、それでも捨てられるかと言われたら絶対捨てられない程度には大切なのですよね。