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リプレイ

  • ふく
  • 5月3日
  • 読了時間: 3分

 掲載準備、あらかた完了。


 ここも入口さえ見つけてしまえば誰でもアクセス可能なネットの上にある以上、作品を展示に入れるときは結局色々諦めた上で掲載するのですが、「リプレイ」は特別思い入れのある作品なので、掲載前に少々、私の思ってきたことを書きます。



 私は、創作物を一切の代償なく楽しめることを当然と思っている方々を軽蔑します。かつて長い間そうやってひとの創作物を何も考えずに食い散らかしてきた創作を始める前の自分自身のことも、心の底から軽蔑しています。


 誰でも見ていいと作者が思って公開しているのだから見る権利があるでしょう。誰でも見られるところに落ちているんだから見ることに罪はないでしょう。作者は素人、まして二次創作なんだし見返りを求める立場にもないでしょう。第一作者は好きで創作していて、それを誰かに見てほしいんでしょう。この業界そういうすてきな利害の一致で成り立っているんでしょう。

 これらの言い分を私は少しも否定しません。正しいと思います。けれど、たとえそうだとしても、創作物は作者が限りある人生の一部を使ってゼロから作り出したものです。当然のように眺められている一本の線も、一つの文字も、それを書いた血の通う指がこの世のどこかに必ず存在し、その一つ一つの献身が積み重らなければ創作物は決して生まれません。作者が「わたしは自分が楽しいからやっているだけ」と心から言うとしても、その作品のおかげで自分が大いに感動させてもらったのなら、作品を手ずから生み出した人に「ありがとう」くらい言いたい気持ちになるのが普通の人情であってほしいと思います。本屋で本を買うのと違い、お金でその気持ちを伝えられるわけでもないのですから。

 創作をしていた時期、そうでない人の多さを感じることがよくありました。ある時からPixivで作品を公開したくなくなったもそのためです。Pixivには良い面も多くありますが、作品を享受する行為が手軽になりすぎ、利用者にその尊さを忘れさせてしまう側面があると思います。また、「リプレイ」の掲載本は再版希望にお応えして二回再版作業を行ったのですが、その後ほとんどの購入者が「読んだ」や「どうも」すら伝えることなく消えていったのには力が抜けました。欲しいときばかり饒舌で、手に入りさえすれば用済みなのかと。本作のweb公開を今も躊躇う大きな理由もこれです。私は二度とあのように扱われたくありません。

 これらの経験を経た今、私はそういう方々には自分の作品を読ませたくない、と明確に思っています。

 ですから本日公開予定の「リプレイ」についても、どんなに面白い作品でも自分は「ただで読めてラッキー」としか考えないだろうと思われる方は、どうか読まずにおいてくださいますようにお願いしたいと思います。本作は私にとって一番大切な、決してそんざいに扱われたくない作品なのです。


 ところで、全く楽しくない創作物であったなら、「ありがとう」もなにもなくてよいと私は思っています。そうじゃなければどんなに下手くそでくだらない創作物でも作者は無条件に感謝されるべき神様だと言っているのと同じなので。創作物の価値判断は受け手のものであり、受け手の心を動かせないのは作者と読者の趣味が違っているか、単に作者の力不足です。それは作者が受け止めるべき結果だと思います。


 というわけで、気が変わらなければ今夜にも。

 心あるみなさまにのみお読みいただけることを強く祈って。

 
 

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