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​Epilogue

「やあ。こんばんは」 

「あら、先生。しばらくぶりです。ひどい吹雪でしたね」 

「本当にね。朝は運転が怖かった」 

「おつかれさまでした。これじゃ人も来なかったでしょうに」 

「ああ……いや、閉館間際に見て行ってくれた人がいたよ。ふたり。とてもいい人たちでね、楽しかった」 

「本当に?熱心な方がいたんですね」 

「キャンバスを一枚注文したいんだが」 

「一枚ですね。今日も八号で?」 

「百号を」 

「え?百号って仰いました?失礼ですけど、間違いじゃ?私の身長くらいあるキャンバスですよ」 

「ああ、それでいいんだ。もっと大きく描きたいくらいなんだが、もうあまり大きいと運べないから。情けないことにね」 

「まあ、どこかへ出展を?」 

「いや、描きたいだけだよ。なに、百号くらいなら手に負えるさ」 

「……何かいいことがあったんですか?先生、なんだか学校で絵を教えて下さってた頃に戻ったみたい」 

「そうかい。……どうしても描きたい景色に出会ったんだ。久しぶりにね」 

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