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星を指す

  • ふく
  • 2月8日
  • 読了時間: 3分

 種ヶ島さんの、がんばろうとしてる人の気持ちに水を差さないところが腹にめり込むほど良い、と一生思って生きている。

 頭がよくて優しい人だから、他人のがんばり方を見ていて非効率的だと思ったり無茶だと思ったりすることも多いだろうに、それを口にすることはない。自分の方が優れていると思い上がらない謙虚で俯瞰した目線の持ち主であることや、正論もその人にとって正解でなければ意味がないことを理解している血が通った賢さがよく見える。


 頑張り屋の白石くんに対応する種ヶ島さんを書いていたときも、彼の優しさにだけフォーカスするとまずは「無理してないか」「大丈夫か」とかいう言葉を言わせたくなるのだけど、数秒後には彼はこういうこと言わないな、となって消えた。白石くんが頑張ってること、頑張りたいと思ってること自体に疑問を呈するような言葉を、たとえそれが純粋な心配から出る言葉にすぎないとしても、種ヶ島さんは言わない。彼は白石くんの進み方が特別好きでもあるだろうし、本当にまずいと思ったときには止めてやる心づもりで白石くんのがんばりたいようにさせたまま見守る方が彼らしいと感じる。

 足にラケットぶつけずにいられなかった白石くんの行動さえ、彼は咎めなかったから。あれはそれこそ「これ以上はだめだ」と思って接触に踏み切った部分もありそうだけど、それでも白石くんの、自分に当たらずにいられなかった焦燥のかたち自体は一切否定せずに尊重してくれた。がんばりたい気持ちの表れでもある焦りを咎めずにいてくれた。(もしあそこで「そんなんしたらあかん」とか焦り方=がんばり方まで窘められてしまったら白石くんパンクしていたかもと思う。)

 優しいなぁ。それも自分勝手な自己満足の優しさの押し売りじゃなくて、相手にとっての最善を思う優しさ。


 そういえば、世間で白石くんがラケットを足にぶつけたことを「自傷」と表現して殊更重大視する向きを一部感じたことがあるが、共感できなかった。なにかしらの不安定さの証として活用すると特定の妄想が捗るという点で看過すべからざる事実なのかもしれないけど、収まりのつかない気持ちの正当な表れとしか私はとらえられていない。白石くんは傷ができるほどやろうとしてやったわけではない様子だし。(自分の投球に納得いかないあまりベンチを殴って両手指骨折したピッチャーが昔いたっけな。)

 そんな小さな違和感を思い出しつつ、人によっては衝撃を受けちゃうような行動に目を奪われることなく、その行動を起こさせた白石くんの思いを見つめ大事にしてくれた種ヶ島さんのすばらしさに再び思考は戻っていくのであった。。情任せに手を引いてやったのではなく、方角を知るための星だけを指し示して見送ったという感じだもんなぁ。感触も何も残さないような距離のあるやり方がなんだかもどかしくもあって、心のまま手を引いてしまえよと思わないでもないけど、それをしないから種ヶ島修二はこんなにも種ヶ島修二なのだ……。


 雪のしじまに閉ざされて。家に籠もってたまのオーブン遊びに興じる土曜である。

 
 

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