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あなたのテニス

  • ふく
  • 3月12日
  • 読了時間: 3分

 閃きテニス言うたって

 聖書テニスの動きが体に染みついとって


 と俯いていたときの白石くん、聖書テニスを否定して種ヶ島さんのテニスをやろうとしていたところがあるのだよな、と考える。奇しくも、昨年の全国大会準決勝で焦った謙也くんがスピードテニスを通用しないと断じて否定し、白石のような完璧なテニスを!と試みて失敗したのと同じよう。あのとき「お前のテニスをやるんや」と心の中で謙也くんに念じ続けた白石くんなのに。

 そう思うと、白石くん自身このアプローチじゃだめなのでは?と思い始めていたタイミングで「相変わらず小さくまとまっとるようやな」=変えようとしても変われへんもんやろ、と声をかけた上で白石くんの正五角形のテニスを再評価させ、他の誰かになることなんてできないんだからお前のテニスをどう使って勝つかを考えなさい、と導いた種ヶ島さんはやはりパーフェクトすぎる。

 憧れは強いエネルギーのようでいて自分自身を置き去りにしがちというか、大前提として自分はその憧れと同じになれる種類の人間なのかという初歩的な考慮をすっとばして愚直にそれになりたいとばかり思わせてくる魔力がある。脇目もふらずひたすらそれを目指すのは美しいようにも見えるけれど、実を結ぶかというと疑問。大抵は自分にないものに憧れるのだし、冷静に考えると到達不可能であることも多い。それなのに到達できない時間が自己否定にばかりなったりして。

 種ヶ島さんが来てくれなかったら、焦りと憧れでぐちゃぐちゃの白石くんが去年の謙也くんのように自分のテニスを否定して負けて終わっていたのかもしれないと思うとぞっとする。


 自分のテニスを否定するということは、彼らにとっては自分自身を否定することに等しいのじゃないかと思う。テニスは彼らの生き方や美意識、人格や人生そのもの。桜乃ちゃんが「リョーマくんを応援してるから」じゃなく「リョーマくんのテニスを応援してるから」と言ってくれたことが思い出すたび泣ける勢いで私に刺さってるのも多分このためで、彼らはみんな、「あなたが好き」なんてぼんやりしたこと言われるよりも、「あなたのテニスが好き」と言われる方がよほどぐっと来るんじゃないか。それくらい、彼らのテニスは彼ら自身の具現なのだと思う。


 白石くんのあり方や生き方ごと肯定して守ってくれたような種ヶ島さん、本当に大恩人だなぁ。

 それぞれのテニスで日本代表に残っている、と胸を張れる種ヶ島さんと篤京先輩は、勝てないと思わされる相手に出会っても自分自身を投げ出さず、向き合い続けてここまで来たんだろう。強い先輩たち。

 
 

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